エンジュの失恋
ナイスなツッコミを見て、確認すべく恋する天使アンジェリークを見た。
エンジュの失恋するところね。
絵が!脚本が!というところは幾重にも語りたいところだが、そこは置いておいて私が感じたのは、思春期にありがちな失恋だったんじゃないの?ってこと。
エンジュの相手が思わせぶりだったみたいなことをどこかで見たことあったけれど、私はそんなことはなかったな。
もしかしたら、エンジュは彼に貢いでいたのかもしれないし、二股かけられていたのかもしれないが、そういう酷いことがあればなにかしらの描写があって然るべき。
(二股はともかく、手製のネックレスをプレゼントするシーンがあるから貢いでいることはないだろう。)
それがないということは、ごく普通の出会いと、失恋だったのでは、と思う。
アニメでそんなことを丁寧に伝えてはいないけれど、こんな流れで、こんな風に伝えないような気がする。
偶然、雪の日出会ったふたり。
転んだところエンジュに手を出してくれたやさしい青年。
たぶん、エンジュの初恋だったのだろう。
天涯孤独でひとりで生きてきたエンジュにとって、そのやさしさが特別に思えた。
次のシーンで冬服でないから、春あたりか。
夜、大きな木下でふたりきりでおしゃべり。
彼がお手製の木彫りのネックレスを褒めてくれて喜んでいると、エンジュにふれるくらいに手を伸ばしてそのネックレスを手に取る。
そこで、エンジュは猛烈に彼を意識してしまう。
そんなに褒めてくれたのならと、わざわざ木彫りの羽のネックレスを作って告白するも失敗。
「エンジュのそんな気持ちには応えられない」と言われる。
運悪く、雨が降りはじめ、そこに青年の恋人らしき女性が傘を持って彼のところへ行く姿を遠目で見るエンジュ。
自分はずぶ濡れ。
でも、彼は彼女から慣れた手つきで傘を持って、ふたりして帰っていく。
きっと振られると思っていた。
そんなのわかってたじゃない、と自分の殻に籠るエンジュ。
たぶん、思わせぶりじゃないよ。
男は単にエンジュに親切にしていただけで、彼女を妹のように思っていたんじゃないかな?
傘のシーンで女性から受け取り、ふたりして相合傘していたのがとても自然だったので、エンジュが知らないだけで、これも周囲から見たら公認の仲だったんじゃないか?
やさしいから好きになる。
これってモテない時期を過ごしてきた人間にはよくわかる。
それで玉砕。
結構ありがちだよね。
孤独の中で生きてきたエンジュが、それがきっかけに自分のことを低評価するのは理解できるし、きっと自分のことを好きになってくれる人なんていないと感じてしまうのは仕方ないことだ。
だからといって、アリオスのことをいきなり好きになって、振られてからなにも手につかないとは如何なものか?
アリオスを意識しちゃうのはわかるのよ。
でも、失恋した彼と同様に「お前に気がない」とキッパリ断られているんだから、そこで暴走するのは???だ。
そもそも失恋だって、相手に恋人がいたからと予想されるから、アリオスがエリスを想っていたことにショックを受けても、自分はいつもそういう運命なんだと思う方が自然じゃないかな。
ところで、アリオス似の青年ですが、似てないよ。
声が違うというのもある。
それに、喋り方も違うんだよね。
更に言うなら、表情がまったく違う。
失恋の彼の場合、終始にこやかなの。語り口調もやさしいし。
記憶の中の彼なので、エンジュの中で脚色されていることもあるだろうが、実際そういう青年のところが好きだったんでしょう。
アリオスの笑い方ってニッて口の端を上げる感じだから、そういうやさしさとかないんだよね。
(そんな皮肉屋な彼が実は面倒見がいいというのがウリなんだけど。)
失恋自体は割合自然な感じがして、それを引きずってしまったエンジュという設定も悪くない。
なのに、なぜあんな話にしか仕上げられなかったのか。そこが悔やまれる。