エロスな関係
鹿島茂さんが、その著書で「女の子が高く飛んでおじさんが受け止めるサーカスの曲芸がとてもエロティックに感じた」と書いてあって、なんだろう?と考えた結果、「互いの絶対的な信頼性がエロい」と結論づけていた。
絶対的な信頼。
確かにそれってエロい。
ふれ合わないにも関わらず、とてもセクシャルに感じるってことがある。
そういう精神的なつながりのエロさ。
そういう意味ではアリコレは本当にエロい。
天レクは公式通りなら、一線を越えるどころか、手をつなぐことも、キスすることなく、最終的には片方は死に、片方は看取る。
その決別の直前まで、コレットは絶対的な信頼をアリオスに置いていた。
それは、命の恩人だったからだ(本当は自作自演の放火犯なんだけど、コレットは知らない)。
宇宙の危機を救う旅の最中にありながら、まったく関係ない(実はこいつがラスボスで原因なんだけど、コレットは知らないからさぁ…)人間を、尊敬する守護聖たちと同列に信頼している。
コレットという少女は心のやさしい子だから、命の恩人に対して疑いを抱くなんてことはできなかっただろうが、問題はアリオス。
この人は、殺そうと思えば殺せる距離でありながら、殺さない。
「エリスに似た少女を、俺は手にかけなくてはならないのか」という台詞はあれど、無人島のイベントだけでなく、決別の寸前の自然洞窟のときだって、ふたりきりだったのに、彼はコレットを殺さなかった。
いや、殺せなかったんだ。
以下は本当に妄想になるけれど、そうとしか思えない。
裏切り者だと自覚しているのに、絶対的な信頼を寄せる彼女との関係を、彼は壊したくなかったんだと思う。
手にかけようと思えば殺せる、この距離が彼には心地よかった。
そばにいたいというアリオスの願望と、いつでも殺せるというレヴィアスの安心感。
これは自分の思いではないと心を偽る。
その理由を「自分が絶対的に有利な立場」として。
最終的に離れたのは、そうならざるおえない立場(私設騎士団のことなど)だったからというのが大きいけれど、心情的にはもう限界だったのではないか。
限りある時間だったからこそ、共にいられる幸せ。
その一秒一秒を大事にして、心に刻んでいた。
死んでもなお、その瞳と唇を覚えているくらい執着してたんだから。