魔恋 クロニクルモード(ネタバレあり)
魔恋で一番感動すると言われていたクロニクルモードを終了。
確かに、本筋の別視点という点でも、隠された過去を垣間見るという点においても、重要事項が含まれ、それによってこのキャラクターはこんな動機で行動していたのかとわかるから感動する。
特に、生まれながらにして不幸を背負って立つ男マイレアス。
レヴィアスの不幸体質は紛れもなく父親からの遺伝である。
彼が反乱そのものに賛成というよりも、己の不甲斐なさによって不幸にしてしまった息子を皇位につけたかった。
これは納得するし、自分で選んで息子に殺されるあたりは感動する。
ですがね、マイレアスが凡庸になったのは、強い魔力を封じてしまった後遺症なんですが、なぜその封印が解けたかが謎。
いきなり「ピコン!!」レベルが上がった!みたいな感じで解けた。
それ以前に、父親である前皇帝が、なぜマイレアスの力を封じる必要があったのか。
これが第二皇子で皇太子の地位を脅かすというなら、まだ理解できる。
しかし、マイレアスは皇太子なのだ。
彼を脅かす存在はない。
(叔父など親族と皇位継承を争ったなどの記述はないから、本当に謎。)
優秀な皇子が立太子すらできないというのは割合あって、一条天皇は愛する定子皇后との第一皇子の立太子を断念している。
(これは定子が父を亡くし兄が流罪となって勢力を失い、道長の娘彰子中宮に屈したから。)
凡庸なトップでも政権が保てるのは、その政治機構の基盤が固まっていたら問題はない。
だから、マイレアスの魔力を封じるそもそもの理由がないのだ。
天レクと違って魔恋ではレヴィアスは廃皇子なんだけど、命を狙われていた理由が強い魔力を秘めているため、皇帝が危惧していたというもの。
でも、皇帝の守りは鉄壁であり、ひとりによって左右されるものではない。
トップに立てるべき人材によって(下から持ち上げる場合も多々ある)そこに不満分子が集まり、反乱を起こされるのを一番懸念すべき材料なんだけど、そこが描かれていない。
つまり、こうした人物が武力を持つことを一番に恐れ、その疑いがある時点で処罰されてもおかしくはないのだから、傭兵団なんてやってられない。
レヴィアスは皇族の身分こそ隠していたけれど、その動向は皇帝に筒抜けだったから、ちょっと変だよ…と思う。
本当に細かいけれど、マイレアスを王族というのだけど、皇族でしょう。
王侯貴族というように、王は爵位のひとつであり、恐らくは絶対王政や専制君主制に近いような強い政権下であった皇族と王族は身分も権力も違っていたはず。
あまりにも政権というものに対して、書き方がおざなりすぎる。
ゲームはひとりが作り上げるものでないから、どうしてもシナリオの詳細が破綻するようなことが起きる。
でも、それを勢いで飛ばしてしまえるような、そういう魅力的なストーリーであればいいのであって、言葉尻を掴まえられるようになると、そこにはもう勢いがないってことなんだと思う。
マイレアスはかなり魅力的な人間に描かれていて、天レクの凡庸さが嘘みたいだった。
けれど、お膳立ての段階で「?」だから、感情移入があまりできなかった。
非常に惜しいな、と思う。
レヴィアス側は革命とか言ってるけど、特別なにかのために戦っているわけじゃなくて、居場所のない連中が一辺天下取ったるか!みたいな単なる権力争いを美談に仕上げようとするから、端々から綻びが出てしまったのでしょうか。
せっかく悲劇性を高めたいなら、ここはしっかり基礎を固めないと。
クロニクルモードを一言でいうなら、「たとえファンタジーだとしても、もちっと歴史の勉強しようぜ」ということでしょうか。