咀嚼力
名作と名高い、帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」を視聴。
内容を知っていたのに、見終わった後の重苦しさは想像以上でした。
差別がテーマですが、それ自体が重いというよりも、見える差別がまかり通っていた時代のいじめの描写がリアルで、私にはこれが重かった。
また、少年役の子が演技が上手で、重苦しさに拍車をかけていて。
いつの時代でも孤児は生きにくいもので、ここではないどこかに行くために宇宙船を探していた少年は、結局最後まで宇宙船を探すところで終わる。
ウルトラマンが介在しても、少年の人生にとってなんの救いにもならない。
そういう結末がまたリアルで、見ている人の心を絞めつける。
とはいえ、脚本も演出も素晴らしいものでした。
シビアな作品だけに、私の場合は精神的に安定しているときでないと見られないのですが、いつかまた再度見たいとは思っています。
以前、ウルトラマンネクサスの内容はウルトラマンとして描かなくても、と書いたのですが、この「怪獣使いと少年」はウルトラマンに入れてこその内容だと思います。
ウルトラマンが登場しても少なくとも少年の境遇は変わらない。
差別などの社会問題をテーマにした社会派のドラマや映画はあるけれど、差別とか孤児の生きにくさとか、少年の寂しさを埋めてくれた宇宙人とかをうまく咀嚼してウルトラマンの世界に生かしている。
これは本当に素晴らしい。
ウルトラマンだからというよりも、このことをウルトラマンの世界観にするなら、というようなシナリオでした。
そういえば、ネクサスのウルトラマンXの客演回を見たのですが。
10勇士見た後で期待もまったくしなくて見たら、これまたよくネクサスの世界を咀嚼してXの世界に入れたと感心しました。
危機に陥ったときに諦めずにいると光が訪れる――ネクサスが現れるという登場はまさにネクサス!!という感じで。
これは完全なる人間態を持たないネクサスならではという感じもします。
副隊長がネクサスに変身しているのですが、副隊長の夫役が過去孤門を演じられていた役者さんで、ネクサスとアイコンタクトを交わす姿は「夫婦だから」とも「この世界で溺れることもなく、恋人を喪うこともなく生きてきたもうひとりの孤門にネクサスは反応した」ともとれる。
もちろん、命の危機を救ってくれたネクサスを見上げただけ、ともとれるし。
いいな、こういう自由な解釈のできる演出は。
平成客演に対して昭和客演はひどいという話を聞きますが、あれはああいう時代だったとしかいえません。
漫画でもアニメでも、前章のキャラクターが再登場する場合があって、よくて「俺たちがここを抑えているから、お前たちは早く行け!」というようなお助けキャラだったり、強さがインフレするための引き立て役、噛ませ犬的なものも少なくない。
それでも、好きなキャラクターの再登場はうれしいもので(長く続いたものしかできない演出でもあるから)、子供たちはそれでも喜んだと思う。
今見たらウルトラマンAで5兄弟が磔にされる回はもう少し力を合わせて、とか思うけれど、みんながいるだけでやっぱりうれしいと思ってしまう。